葬儀やお墓参りの際、線香を上げることは日本の伝統的な儀式の一つです。線香は故人を偲び、霊を慰めるための重要な役割を持っています。
弔問に伺った際やお墓参りの際、故人様の宗教が仏教であれば必ずお線香をあげます。弔問やお墓参りに欠かせないお線香ですが、宗派によってお線香をあげる本数に違いがあり、お線香をあげる際に決まったマナーがあることはご存じですか。
そこで今回は、お線香をあげるその時になって迷ったり慌てたりしないために、お線香の正しいあげ方やマナーについてご紹介します。
線香の意味
まず、線香を上げる意味について説明します。線香には以下のような意味や役割があります。
霊を慰める
線香の香りは、仏や故人の霊を慰めるためとされています。香りが天に届き、故人が安らかに眠ることを願います。
浄化作用
線香の煙には浄化作用があると信じられており、場の清めや自分自身の心身を清めるために用いられます。
仏や故人への供養
線香は仏や故人への供養の一環であり、敬意と感謝の気持ちを示すために供えます。これにより、故人の成仏を祈ります。
結びつきの象徴
線香の煙が天に昇る様子は、仏や故人との結びつきを象徴し、現世と来世をつなぐ架け橋としての役割も持っています。
お線香をあげる際の手順
①左手に数珠を持つ
②お仏壇の前に座布団がある場合は、座布団の手前でご遺族に一礼。
③お仏壇の正面座布団の上に座って一礼をして合掌。 ※地域、宗教によっては合掌がない場合もあります。
④備え付けのマッチに点火し、ろうそくに火を灯す。
⑤ろうそくに火をつけ、お線香に火をつける。
⑥お線香に火をつけた後は、反対の手で扇いで火を消し、煙だけにします。
⑦香炉にお線香を立てる、もしくは寝かせる。※お線香の立て方や本数は宗派によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
⑧「おりん」を一度鳴らしてから合掌。※浄土真宗ではおりんを鳴らしません。
⑨数珠を両手に掛けてから合掌した後、数珠を左手のみに掛け直します。
⑩遺影に向かって、深く一礼しましょう。
⑪ろうそくの火を消す。ろうそく消しがない場合は、手であおぎ消す。
※後にお線香をあげる方が控えている場合は、ろうそくの火は消しません。
⑫一礼して座布団から降り、少し下がってもう一度ご遺族に一礼。
お参りの作法
合掌:線香を立てた後、合掌して静かに祈りを捧げます。このとき、故人の名前を呼びながら、心からの祈りを捧げましょう。
数本の線香:通常、一人につき3本の線香を上げるのが一般的です。3本の意味は、「過去・現在・未来」を表すとも言われています。
おりんの鳴らし方とタイミング
おりんは、仏壇や葬儀の際に鳴らされることが多い鈴です。おりんを鳴らすことで、心を落ち着け、故人や仏に対する敬意を示します。
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鳴らすタイミング:
- お参りの前:お参りを始める前に、おりんを一度鳴らします。これにより、仏前での儀式の開始を告げ、心を整えます。
- お参りの後:お参りが終わった後にも、おりんを一度鳴らします。これにより、儀式の終了を告げ、静かに心を落ち着けます。
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鳴らし方:
- おりんは静かに持ち、木槌で軽く叩きます。強く叩くと音が大きすぎるため、穏やかな音が響くように心がけましょう。
宗派別に見る線香の上げ方
日本には様々な宗派がありますが、代表的な宗派ごとに線香の上げ方やマナーが異なる場合があります。以下では、浄土真宗、曹洞宗、天台宗、真言宗、日蓮宗について詳しく解説します。
浄土真宗
浄土真宗では、他の宗派と比べて線香の使い方が独特です。
本数
浄土真宗では、基本的に線香は1本だけ上げます。
火のつけ方
火をつけたら、線香を立てずに横に寝かせます。これは、浄土真宗の教えに基づき、「故人が阿弥陀如来の光明に包まれて安らかに眠る」ことを象徴しています。
お参りの作法
合掌し、心の中で「南無阿弥陀仏」と唱えます。これは、阿弥陀如来に帰依することを示しています。
おりんのタイミング
浄土真宗では、お参りの前後におりんを鳴らします。
曹洞宗
曹洞宗では、禅の教えに基づいたシンプルな作法が重視されます。
本数
一般的には1本、または3本の線香を上げます。
火のつけ方
線香を立てる際は、仏前に一礼し、火をつけた線香を静かに立てます。
お参りの作法
合掌し、心の中で「南無釈迦牟尼仏」と唱えます。これは、釈迦如来に対する敬意を示しています。
おりんのタイミング
曹洞宗では、線香を立てた後、合掌前におりんを一度鳴らします。お参りが終わった後にも再度鳴らします。
天台宗
天台宗は、天台大師(最澄)によって開かれた宗派で、線香の上げ方にも独自の特徴があります。
本数
一般的には3本の線香を上げます。
火のつけ方
線香を立てる際は、仏前に一礼し、火をつけた線香を静かに立てます。
お参りの作法
合掌し、心の中で「南無妙法蓮華経」と唱えます。これは、妙法蓮華経に対する敬意を示しています。
おりんのタイミング
天台宗では、線香を立てる前とお参りが終わった後におりんを鳴らします。
真言宗
真言宗は、弘法大師(空海)によって開かれた宗派で、特に曼荼羅(マンダラ)や護摩(ごま)などの儀式が特徴です。
本数
一般的には1本、または3本の線香を上げます。
火のつけ方
線香を立てる際は、仏前に一礼し、火をつけた線香を静かに立てます。
お参りの作法
合掌し、心の中で「南無大師遍照金剛」と唱えます。これは、弘法大師に対する敬意を示しています。
おりんのタイミング
真言宗では、線香を立てた後、合掌前におりんを一度鳴らし、お参りが終わった後にも再度鳴らします。
日蓮宗
日蓮宗は、日蓮聖人によって開かれた宗派で、法華経の教えを重視しています。
本数
一般的には1本、または3本の線香を上げます。
火のつけ方
線香を立てる際は、仏前に一礼し、火をつけた線香を静かに立てます。
お参りの作法
合掌し、心の中で「南無妙法蓮華経」と唱えます。これは、妙法蓮華経に対する敬意を示しています。
おりんのタイミング
日蓮宗では、線香を立てる前とお参りが終わった後におりんを鳴らします。
お線香をあげるときの注意点
お線香をあげる時には、いくつか注意を払っておくべきマナーがあります。弔問の際にはご遺族に失礼のないよう、一般的な振る舞いを把握しておくことが大切です。
後からお線香を立てる人がいる場合はスペースを空けておく
お線香を2本あげる際、くっつけて立てても間隔を開けても、基本的には問題ありません。しかしながら、お線香をあげる方が複数人になる場合は、香炉のスペースが広く使えるよう、2本くっつけて立てた方が親切です。
天台宗や真言宗に関しては、香炉の中の手前に1本、お仏壇側へ2本というように、逆三角形でお線香を配置するのが良いとされています。
なお、ご葬儀後に弔問先へ伺う場合は、事前に許可を取ることが大切です。日程はご葬儀後4~5日経過してから四十九日までが良いでしょう。また、ご遺族によっては香典をお受けしない 場合があるため、香典を持参して良いかどうかも確認します。
服装は、カジュアルなものや派手なもの、喪服は避けます。着用するのは落ち着いた平服にして、数珠を持参しましょう。また、お供え物は日持ちのするものを選び、高価すぎるものや生ものは避けるようにします。
このブログ記事では、線香の上げ方の基本手順と、宗派ごとの違い、さらにおりんを鳴らすタイミング、お線香をあげる際のマナーについて詳しく説明しました。これにより、葬儀やお墓参りの際に自信を持って線香を上げることができるでしょう。どの宗派に属していても、故人への敬意と心からの祈りを大切にすることが最も重要です。また、線香を上げることで霊を慰め、浄化作用を享受し、仏や故人への供養を行い、現世と来世の結びつきを感じることができるでしょう。