引導について

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2022.04.06

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引導について

引導って何?

すべての生きるものに対して、仏の道へ導くことです。

仏教の葬儀においては、導師様「僧侶」が法語を唱えて故人様をあの世に送り出す儀式を指します。「引導を渡す」という慣用句は、あきらめるように最終的な宣告をする場合などに用いるため、よくない意味に取られがちですが、葬儀では仏様のもとへ導いて差し上げるという前向きな言葉なのです。

引導と法語

仏教での葬儀には、多くの場合、引導という場面があります。その場面では各宗派で伝えられている法語を唱えて、故人様を仏の道へと導きます。

引導の儀式

葬儀は故人様の冥福を祈り、今生での別れを告げるものです。宗派によって、葬儀の流れなどが違う場合もありますが、最後に行うのが、引導の儀式です。故人様を称え、彼岸へと導く法語を唱え、松明を模したものをお棺や祭壇に置くこともあります。

松明を模したものを使用するのは、古来は葬儀のときに導師様「僧侶」の手によって火葬が行われており、実際に本物の松明を葬儀で使用されていたとの説から来ています。

仏教が生まれたインドでは、火葬をして身を清めるという考え方がありました。仏教の基となるヒンドゥー教でも、魂が煙となって天に昇っていくという考え方です。お釈迦様も火葬でしたので、仏教ではそれにならって、火葬が主流となっています。

引導は、故人様を仏のもとへ導く、つまり、今生への別れを告げる儀式となります。この儀式が葬儀の意味であり、宗教的な意味ではお別れとなるのです。

法語について

引導の場面には導師様「僧侶」が法語を唱えます。法語とは、広い意味で言えば仏教で正法を説く言語です。

引導のときに用いられる法語は、宗派によって異なる場合もありますが、最初に仏の教えを説き、故人様の戒名、そして生前の徳を称える形式になっている場合が多いようです。葬儀の前に親族に対して、導師様「僧侶」が生前のことをお聞きして、法語をつくることが一般的です。

曹洞宗など禅宗系の宗派では、法語の最後に「喝」や「露」など大きな声を出し、故人様の魂を激励することもあります。亡くなったことを故人様に知っていただき、穏やかに仏のもとへ導くための激励とも言われています。

宗派による引導の意味

仏教にはさまざま宗派があります。それぞれご本尊や使用する経典が違うこともあります。基本的な考え方は、通じるところがありますが、引導の方法などには少し違いもあります。

臨済宗・曹洞宗

臨済宗や曹洞宗など、禅宗系の引導儀式は、古来中国の黄檗希運禅師という禅僧の逸話に由来します。

禅師は帰郷した際に肉親と会ってはならないという戒律を守り、盲目だった母親とも会いませんでした。しかし、母親は禅師のことに気づいてしまい、会いたさに、舟で故郷を後にする禅師を追い、川に飛び込み溺死してしまいます。禅師は急いで戻りましたが、母の亡骸は川底に沈んだままです。禅師は自分の行いを悔い、法語を唱えて喝を発し、持っていた松明を川に投げ入れました。すると、安らかな顔をした母の亡骸が浮かび上がったと言います。

このことから、臨済宗や曹洞宗では松明を使い、それを投げるという行為が行われます。そして、禅師が発した引導法語で引導を行っています。

浄土宗

浄土宗は阿弥陀如来をご本尊とする宗派です。引導のことを引導下炬「いんどうあこ」と言います。下炬とは火葬のときに火をつけることを表します。

引導下炬は、導師様「僧侶」が松明に見立てたものを2本とり、1本を捨てます。これは、煩悩のあるこの世を離れることを意味しています。そして、もう1本の松明で円を描きながら、法語を唱え、松明を捨てます。これは、浄土への思いを表しています。浄土宗の場合も、前述の逸話によってこの儀式が行われるようになったようです。

浄土真宗

浄土真宗の場合、引導はありません。なぜなら、信者であれば、死後は必ず浄土に行くことができるという考えだからです。成仏を祈念する必要がないということです。

葬儀自体も故人様を偲ぶことはありますが、拝む対象はご本尊である阿弥陀如来です。

そのほかの宗派

そのほか、日蓮宗では引導文の読み上げを行い、密教である真言宗では、印を結び、光明真言を唱えます。どの宗派でも、仏のもとへ導く葬儀のなかでも一番重要な儀式として位置づけられています。

儀式が、ご焼香前か後かは、それぞれの宗派により異なりますが、故人様との本当のお別れという位置づけは変わりません。

煩悩を払い、今生との別れを告げる引導の儀式は、故人様との思い出を大切にしながら、冥福を祈り、別れを告げる瞬間でもあるのです。

まとめ

引導の儀式は葬儀にとって中核とも言える重要な場面です。それと同時に、故人様の魂があの世へと旅立つ瞬間でもあります。故人様との別れは悲しい出来事ではありますが、このように葬儀への理解が深まれば、残されたものもひとつひとつ区切りをつけられるのではないでしょうか。

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