現代の葬儀文化において、亡くなられた方をきれいにし、最期のお別れの準備を整えるための「湯灌(ゆかん)」や「エンゼルケア」が注目されています。この2つは共に故人への敬意を表し、遺族にとっても大切な儀式の一つですが、実際には異なる特徴を持っています。本記事では、湯灌とエンゼルケアの違いについて詳しくご説明します。
1. 湯灌(ゆかん)とは?
湯灌とは、葬儀の中でも最も大切な儀式のひとつで、一番最初に行う儀式です。亡くなられた方の体を洗い清めるための伝統的な儀式です。日本では古くから行われてきたもので、死者を「けがれ」から清め、新しい旅立ちにふさわしい状態にすることを目的としています。
日本では古来から湯灌が行われ、以前は古式湯灌と言われていました。
当時は、親族の手によって、ぬるま湯を用意してタオルなどで故人様の体を拭き、着替えを行い、最後に納棺する習慣がありました。
その古式湯灌が今も受け継がれ、現在ではプロの専門家ができ、業者が代わりに行い、逆さ水や薄化粧・顔そり・洗体・洗髪・納棺(好きな衣装に着せ替え)まで行ってくれます。儀式の中で一部は遺族親族にもお手伝いをしてもらうことがあります。
納棺の儀はお通夜前に遺族親族が集い、ゆっくりと故人様と向き合い、大切な時間を過ごし、「ありがとう」と感謝の言葉を伝え、故人様の安らかなる旅立ちを願いながら行う大切な納棺の儀式でもあり、近年の葬儀には欠かせない儀式のひとつとなっております。
- 儀式の内容:湯灌の儀式では、まず故人の体を洗い清め、洗髪や髭剃りなどを行います。湯灌はただ単に体を洗う行為ではなく、遺族や参列者が心を込めて行うことで、故人に対する最期の思いを表す重要な儀式とされています。
- 行う場所:湯灌は通常、葬儀場や自宅で行われますが、湯灌専用の設備を備えた湯灌車が用意されることもあります。湯灌車は、移動式の専用車両で、遺族の希望に応じて出張することも可能です。
- 準備と道具:湯灌には、温水を使用するための機材や、洗髪や剃毛用の道具などが必要です。また、葬儀スタッフの他に湯灌師と呼ばれる専門の担当者が行う場合もあり、熟練した技術が求められます。
湯灌には、故人を見送る家族にとっての心理的な意義が大きいとされます。故人の体を清めることで、遺族にとっても気持ちを整理し、別れを受け入れるための重要なプロセスとなります。
2. エンゼルケアとは?
エンゼルケアは、湯灌と同様に故人を清める行為ですが、医療機関や介護施設で行われることが多く、医療・看護スタッフが主に担当します。エンゼルケアの目的は、故人の体を整え、家族に故人をきれいな状態で引き渡すことです。病気で亡くなられた場合、看護婦や施設のスタッフによりアルコールでの清拭やメイク等が施される事が多く見られますが、死後の処置として行われる為、遺族が同席することはできません。
- 内容:エンゼルケアでは、故人の顔や体を清拭し、顔色や表情を整える作業が含まれます。また、衛生的な処置として、体内の汚物を取り除いたり、衛生的に整える措置も行われます。
- 行う場所:エンゼルケアは主に病院や介護施設内で行われます。病院では、家族の立会いのもとで行われる場合もありますが、状況によってはスタッフが立会人なしで行うこともあります。
- 使用する道具と準備:エンゼルケアには、清拭用の布や、衛生的な処置を施すための専用の用品が使用されます。看護師や介護士が行うため、医療的な知識が重要とされます。
エンゼルケアは、医療や福祉の現場で必要とされるケアであり、衛生面や感染予防の観点から、専門的なケアが施されます。
3. 湯灌とエンゼルケアの違い
湯灌とエンゼルケアは共に故人を清める行為ですが、その目的や行われる場所、関わるスタッフなどに違いがあります。
項目 |
湯灌 |
エンゼルケア |
目的 |
儀礼的、宗教的 |
衛生的、医療的 |
行う場所 |
葬儀場、自宅、湯灌車 |
医療施設、介護施設 |
実施者 |
湯灌師、葬儀スタッフ |
看護師、介護士 |
内容 |
全身の清めと儀式 |
顔や体の清拭と整え |
湯灌は伝統的な儀式としての意味が強く、エンゼルケアは医療現場での衛生的なケアが主眼となっています。